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  • 2020.04.21 Tuesday

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    フォーラムをめぐる人々ーむさしまるのこぼれ話 その一

    • 2017.09.22 Friday
    • 23:03

    先月観た中国映画は不思議な作品だったな。意味があるんだかないんだか、何が言いたいんだかさっぱり分からんのよ。そのくせ、あと後まで、映像ばかりがちらつく。例えば、中国の文革時代の下放されたいわゆるインテリの青年が、山のなかの小高い丘にある小学校の校庭で、荷車らしきものの上にちょこんと飛び乗る。背景は夕焼け風で青年の体のシルエットが人形のように浮かぶ。何だろ、これ? 意味を追い求めるわたしらは堕落した人間なのかもな、と思ったりする。

     

    不思議はいっぱいある。もう一つ、どうもよく分からない音がある(実はいくつもあるんだけど)。あるシーンで、カポンカポンと音がする、池のなかに乾いた太い竹を何本か浮かべて、そいつらをぶつけているのかもなあ、と思わせる音響で、これも忘れられないなあ。

     

    忘れてたけど、冒頭のシーンも忘れがたい(変だね、この書き方)。いい年のオッサンが結構な太さの竹の筒で煙草を、無言で、吸っている。そこに主人公らしき青年が登場し煙草をめぐんでもらう。言葉は一切なし。言語なんかで大切なことは伝わらないよ、といわんばかりなのだな、これが。

     

    さて、何の映画でしょうか? ジャーン! 答えはチェン・カイコーの『子供たちの王様』でした。

    フォーラムをめぐる人々ーぶらりと映画館

    • 2017.09.09 Saturday
    • 15:27

    ぶらりと映画館

     

     

    街のまんなかで、ふと真空の時間を持つことがあります。なんの予定もなく、時間がたっぷりあるという幸福な状態です。そんなときは、近くの映画館か美術館をぶらりと訪れるのが一番。ときに至福の時間を得ることができます。まったく予定していなかっただけに、その喜びにはまた格別の味があります。

     

    今日、お茶の水での歯科の治療が終わったのが11時。雨が降っていて、予定していた自転車散歩もできません。このまま帰宅するのもなぁ、という気分になりました。そこで、飯田橋のギンレイホールを覗いてみることに。ここはいまでは珍しくなった2本立て上映の映画館です。たっぷり時間がある身には2本立てはたいへん有難い。しかも、映画館主催の方の眼は確かで、時間を無駄にしたという記憶はまずありません。

     

    『タレンタイム』と『台北ストーリー』。後者はなんとなく中身が想像されますが、タレンタイム? いったい何語? どこの国の映画? このようにまったく予備知識ゼロ。窓口で配布された「ギンレイ通信」というミニ案内を読んで、これがマレーシアの映画だということをはじめて知りました。監督はヤスミン・アフマドという女性で、8年前、51歳という若さで亡くなっている。

     

    タレンタイムとは、Tale in timeで、高校生の音楽コンクールのことでした。このコンクールを、マレー系、インド系、中国系……、様々な高校生が目指すという、いわば青春物語です。それぞれの学生にはそれぞれの家族があり、宗教もそれぞれ。それゆえに生じる矛盾やら悲劇やらを、ユーモアたっぷりに描きます。クスリと笑いながら観ていくうちに、マレーシアの複雑な社会のありようが、肌身に沁みて理解されます。

     

    人種・文化・宗教の差、親子の葛藤、聾唖という障がいまでも、若者たちは乗り超えます。困難をともないますが、清々しいその生命力に、心からなる拍手をおくりました。こんな気持ちになる映画などそうあるものではありません。それに、全編に流れる多彩な音楽も聴きもの。インド系、中国系、フォーク調、ドビュッシーやバッハまでも!

     

    ぶらりと映画館に入って、思わぬ拾いものをした。そんな幸せな一日でした。

     

    2017年9月4日 森淳